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東京高等裁判所 昭和50年(行ケ)11号 判決

原告

アメリカ合衆国マクニール・コーポレーシヨン

右代表者

エベレツト・エム・マイヤーズ

右訴訟代理人弁護士

竹内澄夫

外一名

被告

グランド工業株式会社

右代表者

山田健二

右訴訟代理人弁理士

藤江穂

主文

特許庁が昭和四九年一一月一日同庁昭和四六年審判第七四七〇号事件についてした審決を取消す。

訴訟費用は被告の負担とする。

事実《省略》

理由

一前掲請求の原因事実中、被告が商標権を有する本件登録商標について、その構成、指定商品及び原告の登録取消審判の請求から審決の成立に至るまでの特許庁における手続、審決の理由に関する事実は当事者間に争いがない。

二そこで、右審決の取消事由の有無について判断する。

(一)  成立に争いのない乙第一号証の一ないし六及び被告代表者尋問の結果によれば、被告は昭和四三年九月二七日から昭和四六年九月二七日にわたりミシンの頭に本件商標を張りつけてこれを外国に輸出したが、本件商標の登録以来、本件商標をそれ以外の指定商品に附して使用したことがないことを認めることができ、甲第四号証(株式会社東京商工興信所の調査報告書)中、被告が昭和四〇年以降本件商標を使用していない旨の記載は、右認定に牴触する限度において前顕証拠に照らしたやすく信用することができず、他に右認定を覆すに足りる証拠はない。

(二)  そして、成立に争いのない甲第三号証(商標登録原簿謄本)によれば、本件商標については専用使用権設定の登録がないことが認められ、また被告代表者尋問の結果によれば、被告は本件商標について他人に通常使用権を許諾したことがないことが認められる。

(三)  そうだとすれば、本件商標が本件審判請求時たる昭和四六年九月二五日まで継続して三年以上日本国内において、商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれかにより、その指定商品のうち、裁縫機について使用されなかつたことはなく、その余の指定商品について使用されたことはないというべきである。

(四)  したがつて、審決は、少くとも本件商標の指定商品のうち裁縫機以外の商品について、不使用の事実が認められないとして、その登録を取消さなかつたのは事実誤認に基くものというべきであるから、審決は違法として取消を免れない。

三よつて、本件審決の適法を理由としてその取消を求める原告の本訴請求を正当として認容することとし、訴訟費用の負担について行政事件訴訟法第七条、民事訴訟法第八九条を適用して、主文のとおり判決する。

(駒田駿太郎 石井敬二郎 橋本攻)

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